2023.08.15 初回鑑賞
スティーヴン・スピルバーグ監督/アメリカ/1998年
未鑑賞でした。この映画、過去に3回ぐらい冒頭のオマハビーチのシーンの途中でギブアップっていうのを繰り返してた。けど今日は義務感でなんとか完走しました。観終わってからずっと胸焼けがするし気持ち悪いし、例えるなら2週間ぐらいは食べ物を口にできそうにない。まともな感想は出てこなくて、ただただ畏怖、嫌悪、怒り、呆れ、そして制作陣に対する畏敬。感動的な物語なんてないな。戦争が如何に残酷で無意味なものかを率直に伝えに来る。敵味方関係なく、国も関係なく、戦争に関わった人全員が、誰一人価値のある行動をしていないという事実を正面から突き付けてくる。ヒーローもヴィランもいない。正義も悪意もない。頭のおかしい支配者と洗脳された人間たちによる愚行。唯一無二の没入型戦争映画だった。登場する人役者全員が、まるで戦争を経験してきたようなリアルな演技。そして戦地の真っただ中にいきなり落とされたような臨場感のある音響。戦うシーンだけは一切音楽がなくて、代わりに音楽の入る余地もない銃声や悲鳴や足音や爆発音や服の擦れる音、手足が引きちぎれる音、助けを呼ぶ声、雨、波、砂、風…それがリアリティを最大限演出していた。とにかく演技と音響。ありえないほどの「本物感」。映画としてはこれ以上ないというクオリティ。
戦争ってなんだよって、つくづく思わされた。今も世界のいくつかの地域で起きているのがこんな非人間的な行為だとは思いたくない。同じ種の生物がやっていることだとは認めたくない。最近は、今の自分たちにはエピジェネティックな変化が起きていて、戦争をやっていた時代の人々のような本能的で暴力的な衝動を我々が理解するのは不可能なのだと、遺伝子的に違うのだと本気で考えてしまいそうになる。きっとこの100年で起きた科学や文化の発展による環境の変化で個々のDNAがたくさんメチル化してヒストン修飾して、本能を制御できるようになったのだと。今戦争なんかやってる人たちは偶々メチル化が起きなかったのだと。あー、それだったら単純でいいよね。ま、実際戦争はそんな本能とか衝動とかだけで起きているものではないとしても、言語を巧みに扱える種がわざわざ消耗するだけの戦争を起こさなくてはならない理由がどうしても遺伝子的な、仕方のないものであると考えてしまうよ。だって理解不能だもん。きっと今の日本人とかって戦争しようってなっても誰も戦地に赴かなくて戦争にならないと思うんだ。それが正しい。それが正常な感覚だと、私はつくづく思う。
戦争の原因ってなんだろう。よくスパイ映画やアニメの世界では、戦争が拡大するほど儲かって喜ぶ武器商人が出てくるけど、そういう人たちって実際に戦地に赴くわけではない。大統領や国家の偉い人も、椅子に座っているだけ。そしてその椅子に座っている人たちがすべてを決めて国民を洗脳して兵士にして人を殺させている。その理由は領土だったり資源だったり宗教だったり歴史を見れば様々か。
中華統一とかの時代なら何となくわかる。あの頃のヒトって行動だけ見ればまだ現代人よりはサルに近いように思えるし…戦うことで縄張りや配偶者を獲得するというのは動物的な本能だ。でも世界大戦のころのヒトってさ、文明も倫理観も科学も発達していて、でもまだ戦って獲得しろ的な本能は理性で制御できないってこと？国同士による戦争は動物のオス同士によるメスを巡った争いの延長なのか？サピエンス全史にヒトは虚構について共通の認識を持つことによって生物的に繁栄したって書いてあったけど、その虚構が戦争の原因になっているのだとしたら、それはやっぱりヒトの本能なのだろうか。もしくはヒトがカルフーンのマウス実験のような状態になっていて哺乳類としてどうしようもないとか？わかんないなー自分には。まあ戦争をしてしまう原因がスパッとわかるなら、簡単なのだ。
困難なことに、この問題は「残酷だ」だけでは解決できない。もし世界中の人間全員がプライベート・ライアンを観て戦争の残酷さを知ったとしても、たぶん戦争はなくならない。「残酷だ」「可哀そうだ」「今も苦しんでいる人がいる」っていう声を上げることはもう何年もやってきた。それだけで世界中の人が納得するのなら戦争はとっくに無くなっているんだろうと思う。もっとあらゆる方面からアプローチしなきゃいけないな。政治、経済、資源、環境、技術、科学、文化、宗教、なんとか、かんとか。
戦争っていろんなものが絡んで起きていて、それをあらゆる方面から見ていかないと解決策も見えてこないんだろうな。残念なことにあらゆることに無力な自分にできることは何もないけど。金もないし。金がないといえば、秋にバイクを買い替えようと思っててそしたら貯金が底を尽きる予定なんだけどどうしよう。
