ただの映画日記

備忘録として映画の感想文を書いているだけ。

「アガサ・オール・アロング」感想

2024.11.02-2024.11.04 初回鑑賞

ジャック・シェイファー監督/アメリカ/2024年

 

 めちゃくちゃ面白かったです…いや、これはハマるわ…知り合いに勧められて観始めて、最初の数話は子供だましかなと思いながら観てたんですよ。ワンダヴィジョンのドラマは結構好きだったけど細かくは覚えてなかったし着いて行けるか不安もあった。でもリオが道に召喚されたあたりからどんどん面白くなっていって、7話8話はマジで終始目が離せなかった。アガサの世界に捉えられて動けない状態。最初から最後まで、全部アガサのせい。つまりアガサ・オール・アロングだったわけです。

 

 ストーリーとしては完全にワンダビジョンの続きからの入り。ウエストビューでワンダの魔法にかかった人たちは解放されたけど、魔法にかかったままだったアガサはある青年との出会いで解放され、力を取り戻すために魔女の仲間たちと「魔女の道」を目指す。ストーリーとしては難しくないけど、じゃあ果たして「魔女の道」って何?この青年は誰?ってのがずっと分からないまま物語が進んでいく。5人の魔女たちは試練に挑むけど、失敗したり仲間を救う犠牲になったりして一人、また一人と減っていく。アガサは道に行ったことがあるようなことを言うけど実際は何が起こるかわかっていない。たくさんの謎が分からないまま中盤へと進んで、最後で怒涛の伏線回収。ホントによくできた脚本。あとキャスティングもピッタリですごく良かった。

 

 魔女たちの物語ってことで古典的なファンタジーらしいポップなテイストのセットが多かったけど、細部までの世界観の作りこみとキャストたちによる迫真の演技によって単なる子供向けで終わらずとても見ごたえがある作品になってた。「道」は空想の世界だけど同時に現実に存在もしていて、誰もが想像するような赤ずきんの森の世界観なのに泥まみれのリアルさがある。「試練」として出てくる家は毎回スタイルを変えて、キャラクターたちの衣装チェンジもあり見飽きない構成。そしてちりばめられた複線の数々…リリアの回は特に面白かった!ずっと時系列をバラバラに生きているリリアの不自然さがようやく腑に落ちた感じ。

 音楽もすごく良かったです。アガサのテーマはキャッチーだし、最後アガサが死ぬシーンでリオとアガサのテーマが混ざっているのが良かった。魔女たちのバラッドもいろんなバージョン出てきたけどどれも良かった…個人的にはレコードのが特に好きでした。

 

 個人的に他のマーベル作品にあまり関連していないのは凄く気に入ってる部分の一つで、そういう作品はもっと増えていくべきだと思う。今やMCUは膨大な作品数で、全部観ていないと追いつけませんよみたいな、ファンの義務感に頼ったような作品ばっかりじゃ新規のファンをいつまで経っても獲得できないからね。そういう私も昔はMCU結構熱心に観てたんだけど、似たような傾向の作品が増え始めてから少し遠ざかってしまった。(とはいっても本作も、ワンダビジョンを観ていない人には導入部分何のことやらって感じだと思うけど。)あとはここ最近のマルチバースブームとは離れた作品だったってのも高評価ポイントかな。たくさん作品があるなら色んなスタイルを楽しみたいからね。

「FLY!」感想

2024.10.26 初回鑑賞

パンジャマン・レネール監督/アメリカ/2024年

 

 これ本当は映画館で観たかったんだよなぁ。忙しい時期で結局観に行けなかったんだけど…スクリーンで見たらかなり映えるんじゃないかっていうカメラワークや高彩度な演出ばかりで本当に惜しい気持ち。やっぱイルミネーションですね…

 子ガモのグエンがとにかく可愛かった。あとママとパパのケージの中でのダンスシーンが良かったです。

 

 子供にもシンプルで分かりやすいストーリーだけど、しっかり起承転結が付いていてストーリーが崩壊していないのが見やすくて素晴らしいなと思います。子供向け映画ってナメてんのかってぐらい伏線拾わなかったり適当なオチつけてたりする作品もあるけど、そんな心配は全然なかった。冒険心を忘れていたパパは冒険の素晴らしさを知り、危険を顧みず冒険を提案した母はいざというときちゃんと身体を張って家族を守った。独りだったダンおじさんは手を取って踊りあえる友達を得た。どのキャラクターもストーリーを通して成長したのが良かった。

 旅の途中で色んな鳥たちに出会うのもよかったです。サギにハトにオウム(?)にニワトリに、最後はペンギン(笑)旅の仲間って冒険物語には必須だもんね。

 あとこういったアニメ映画にもしっかりシネマオーケストラの音楽がついている点がすごく魅力的でした。やっぱり感情は音楽に乗るものだよなってしみじみ思った。

「ヴェノム / ザ・ラストダンス」感想

2024.10.26 初回鑑賞

ケリー・マーセル監督/アメリカ/2024年

 

 面白かった!!マーベル作品としては久々な気がするヴェノム新作、過去2作の作風をしっかり引き継ぎつつシンプルで纏まりのいい作品だったと思う。尺もちょうど良かった!

 

 ヌルっていう新たなラスボス的存在を初手で登場させて、話としては心機一転。無理にマーベルユニバースとつなげることもなく初心者にも割と優しい作品だったんじゃないかと。ヴェノムはかなりダークヒーロー的存在で、見た目もそれに即して悪役面だけど、そのヴェノムに対するヴィランがさらにグロい見た目をしていることでヴェノムがたちシンビオートがかっこよく見える構図。主人公をキモめの見た目にすると悪役をあらにキモい見た目にしなきゃいけないから大変だよね(笑)今どきのヴィランのビジュアルから比べるとダースベイダーなんて小動物みたいに可愛く見えるというもの…ヌルは最後にチラッと素顔が見えただけだけど、まあダースシディアスの重症化版ですね。

 ヌルの手先がコーデックスを狙っていて、コーデックスはシンビオートと宿主の魂が一体化した時にしか現れないっていう設定がエディとヴェノムの相棒関係を密にしていてとても良かったです。片方でも死ねばコーデックば消えてなくなり、コーデックさえなければヌルの手先が地球上で暴れまわることもないという熱々な設定。リーサルプロテクターとしては自分たちが犠牲になる他ないよねって話で…結末はその時点で何となく分かっているわけなんだけど、これまでのエディとヴェノムの旅路を見ると戦いを見届けないとなっていう使命感に駆られるわけです。今回味方のシンジケートがたくさん出てきて共闘するシーンがあって本当にアツかった!!シンビオートを「美しい」って表現した博士、この共闘のためにあのセリフがあったんじゃないかと思える。いろんな色のシンビオートが出てきて、姿かたちも様々で、謎の寄生生物ってより人間味があってよかったです。博士の登場シーン、雷に打たれた過去が最後のほうにスーパーパワーとして伏線回収されるもんだと思ったけど、そんなには出てこなかったので次回以降彼女がメインになって物語が続くのかな?

 自由の女神が見たいってのが死亡フラグになってしまったヴェノム、切なくてとても好きでした。以上。

 

 サントラの選曲が良かったなー。Don't stop me nowにダンシングクイーン(EDMバージョン)。昨日ぐらいからたまたまQueenを通勤時に聴いてたから個人的にタイムリーだった(笑)。エンディングの映像もとても良かったです。いろんな動物に寄生して楽しんでるヴェノム…

 エンドクレジット後の映像は何か意味があったのかなかったのか…ちゃんとゴキブリ生き残ってて草。

「ジョーカー / フォリ・ア・ドゥ」感想

2024.10.14 初回鑑賞

トッド・フィリップス監督/アメリカ/2024年

 

 これは賛否両論分かれるのも理解できるなー。我々が期待したジョーカーではなかったけど、それが良い意味での期待外れだったのか悪い意味での期待外れだったのかは好みによるよねっていうところ。きっと前作のような大暴れこそがジョーカーだっていう人が多数派だと思うから、本国での興行も伸びなかったのかなと思う。

 

 個人的で正直な感想を述べるなら、1年とか前にレディーガガ演じるハーレークイーンが映った予告を観て、今度はあのホアキンジョーカーにガガのクイーンが加わって更なる狂気が観られるんだろうと楽しみにしていたので少し退屈してしまった部分はあった。前作の続編という位置づけではなく後日談っていう心持で観れば違ったかも。ヴィラン的なジョーカーはもういなくて、刑務所に入れられたアーサー・フレックが裁判にかけられて惨めに衰退していく様子だけがリアルに描かれている。世の中を壊してやろうというカリスマ的な熱意はすでに心の中にしかなく、脳内での妄想だけがガガとのミュージカルシーンとして描かれているだけ。なんというかな、全体的にジョーカーをテーマにしたガガ様の舞台、みたいな感じ。かといってハーレークイーンとジョーカーの関係について焦点を当てているわけでもなく、何を主軸にしたいのか少しわかりにくい。メッセージが分かりづらいというか、観客側に委ねられていたのかな。最後何でもない囚人仲間に殺されたアーサーがとても虚しくて、結局ほとんどのヴィランはどんなにカリスマでもヒーローにはなれないし華やかな最期を迎えることもできないってことなんですかね…

 

 全体的に地味な作品だからこそ、ホアキン・フェニックスの怪演が特に光る映画でもあった。なんとなくターのケイトブランシェットを思い出した。あんなジョーカーを演じられるなんて狂人変人だよ(褒めてる)。ガガのハーレークイーンはハーレーってよりリーって感じで、ガガ様って感じが強かったな。ピアノ弾いてるシーンなんかは完全にライブのガガ様だった。

 ミュージカルシーンの演出は90年代の雰囲気で揃えられていてクオリティが高かったけど今の若者たちにウケるかと言われるとどうだろう…

 

 関係ないんだけど予告で見たロードオブザリングのアニメ化映画がかなり楽しみです…

「シヴィル・ウォー アメリカ最後の日」感想

2024.10.06 初回鑑賞

アレックス・ガーランド監督/イギリス・アメリカ/2024年

 

 普通に気になっていた作品なんだけど、前日チケット取るときに偶然前評判を目にして、かなり覚悟して観に行ったのです。ホラー系でないことは分かっていたけど、ホラーより怖いとか途中で席立とうか迷ったとか書いている人もいたので、苦手な部類だったら嫌だなと。で散々迷って結局観たんだけど、自分が思っている方向性で後味の悪い映画というわけではなかったです。

 

 内戦が起きているアメリカの戦場カメラマンのロードムービー、とシンプルに表せる映画。”内戦について”の詳しい話は何もなく、反乱を起こした国民によって結成された軍がワシントンDCのホワイトハウスに向かって攻撃する場面だけがリアルに映し出される。しかし主役となるのは兵士ではなくジャーナリスト。内戦の悲惨さと、それを外の人間に伝えるのになくてはならない存在であるジャーナリストについての映画だ。実際に戦場に赴いたことがあるわけはないからこの映画で描かれる戦争がどれほど現実に近かったのかは想像の域を出ないけど、とりあえず身も蓋もないことだけは分かる。最前線に居る兵士以外は相手が誰かも分からずに殺す人々。もはやそこには正義も意義も目的もなく、全部見失ってただ銃弾を飛ばし合う行為だけが残る。無意味すぎて無意味オブ無意味。撃ってくるから撃つのだというのは、何のための戦いだろうか。つまりこの映画は、どんな事情であれ戦争ってのは無意味なんですよってのを良く表していた気がする。気に食わない元クラスメイトを蹂躙するガソリンスタンドのスタッフ、内戦に乗じてどさくさに紛れ異邦人を殺す赤いサングラスの兵士。私情交じりで残酷に見えるけどやってる行為は内戦も同じだ。

 戦争について考えさせられる映画ではあったけど、この映画のメインはあくまでジャーナリストについて。2人の女性カメラマンが出てきて、片方は出版社に所属するベテランのリー、片方はプロを目指す若いカメラマンのジェシー。その他にも長年業界に身を置くサミーとジョエルの4人のジャーナリスト集団で前線を追いかける。戦場というのがいかにクレイジーな現場で、そこに身を投じ続けるには…報道の力を信じ使命感で戦争を撮影してきたリーはヒヨッコのジェシーから見ると恐れを知らないプロに見えたけど、リーは目の前で消えていく命に無感情になることはできなかった。一方でジェシーやジョエルはもっと狂気的で、結局戦争という場面ではそういう人たちが生き残るんだろうなと思わせる最後。怖いねー。人が倫理観も何もかも捨てられちゃう世界だよ。

 

 音が凄いと事前に聴いていたけど、フォーリーが本当に良く出来ていたと思う。音楽の選曲が普通の戦争映画とは違い、どちらかというとロードムービーのテンション感。そういうチグハグで奇怪な感じがA24節が効いているなと思った部分。

 上空からDCを映す場面とか、全編通して何となくテレビの報道を見ているような画角で報道陣の視点映した報道を見ているような感覚だった。画的に美しく魅せている部分もあって、芸術作品としても成り立っているのが面白いなと思った。