2024.03.29 初回鑑賞
クリストファー・ノーラン監督/アメリカ/2023年
まずは日本で公開された事嬉しく思います。本国からは約8カ月の遅れだけど。去年の夏頃は韓国に観に行こうか迷ってたぐらいなのでまあとにかく劇場で観れて良かった。
昨日チケットを予約したんだけど今日は朝から暴風雨で、アクセスがバイクしか無くて、しかも通勤の渋滞に巻き込まれて40分も土砂降りに晒され虚無虚無プリンになりながら劇場に到着しました。しかも傘持ってなかったから駐輪場から映画館の入り口までの間に髪がびしょ濡れになって恥ずかしかった。そんな感じで観る前からアドレナリン全開だったわけです。後ろの方はすでに埋まっていてIMAXレーザーを前から4列目で鑑賞。少し前すぎて疲れました(笑)3時間あるし。
最高だったとか凄かったとか今年ベストだとか短い言葉で片付けられるような映画では勿論ないけど、とりあえず映像と音響に関しては期待通りで個人的な今年ベストです。今のところ。去年観れてたら昨年ベストになってたかも。トリニティ実験の、遅れて爆発音が聴こえてくる演出が凄く緊張感とリアリティがあって良かった。カラーと白黒の使い分け、爆音と無音の使い分けにメリハリがあったから3時間観ていても飽きはしなかった。音楽がルドウィグ・ゴランソンという事でものすごく期待していたんだけど、これも本当に期待通りでした。ただテネットやブラックパンサーのようなエモーショナルな音楽は少なく、機能的な音楽が多かった。耳につくようなバイオリンが凄く印象的でした。
あと心理描写を映す独特なエフェクトのシーンが効果的だったなと思う。
内容に関しては、正直言うと自分がアメリカの歴史やら政治に全く詳しくないおかげでついて行くのが大変でした。ヒューマンドラマとは聞いていたけど、ノーランだからもう少しサイエンス寄りの内容になると思っていたら思いっきり政治の話だった気がする。難しかった。少しは勉強してから観にいけば良かったと3時間ずっと思いながら観ました(笑)
事前に観ていた人たちからの口コミでなんとなく予想はついていたけど、この映画の主題は原爆ではなく、ノーランが原爆や核兵器問題についての私的なまたは客観的な主張を語りたかったわけではないと感じました。本作はあくまでオッペンハイマー自身のヒューマンドラマでしかなくて、しかしながらノーランは自分の影響力をよく分かっているから核兵器問題に関して広く問題提起するという目的は十二分に果たせた、という感じですかね。でも劇中の「使うまでは、人類は恐怖を知らない」的なセリフが頭に残りました。結局どんな兵器にも言える事だけど、どっかで使われた過去があるからその恐ろしさを知っているし、もしアメリカが使わなかったら代わりに他が使っていたと思うと、結果は変わらなかったのかなと思った。
先週のクローズアップ現代でノーランの特集をやっていて、ノーランが「自分の息子は、核兵器問題についてあまり意識しておらず自分たちの世代にとって気候変動に比べれば取るに足らない問題だと言った」みたいな事を言ってて、まさに私個人も最近まではそう思っていたから、多分私たちの世代には必要な問題提起だったと思う。日本でさえこういう作品を新しく作らないし普段からニュースやらディベートで考えると言った機会もないから、当然と言えば当然だ。身の回りにはそれよりももっと重要な問題がたくさんあるし。でもロシアとかパレスチナが戦争をやっている今、あまり遠い昔の話でもないような感覚になってきている。そのタイミングでのオッペンハイマーの公開は、世界中の人に核兵器問題について考えるきっかけを与えることになっただろう。
月並みな話だけど、中性子核分裂は原爆にも原発にも使われているわけで、まさに技術に罪はないってやつだよなと思う。コンピュータすら戦争なしではあり得なかったんだから科学的に見れば、開発者を一概に悪にはできないよなという話。まあ使った事は勿論悪いけど、それはもう原爆に限った話じゃなくて全ての兵器に言える事。でもオッペンハイマーも青酸カリを教授のリンゴに仕込むぐらいの性悪な面は持っていたんだなとも思う。どこまで本当か分からないけど。実際に原爆が落とされた現場を観たわけではないようだし、呵責に耐えかねて…みたいな最後の方の展開もどのぐらいが実話だったのか分からないけど。
とりあえず色々勉強して上映終了する頃にもう一回観に行こうかなと思います。それにしても、初日の朝イチでIMAXシアター満席だったのびっくりした、