ただの映画日記

備忘録として映画の感想文を書いているだけ。

「リバー、流れないでよ」感想

2023/08/13 初回鑑賞

山口淳太監督/日本/2023年

 

 いや~~、面白かったです。老舗旅館とその周辺の狭い範囲だけで繰り広げられる2分間のタイムループ物語。観て分かる低予算映画なのに、よく練られた脚本のおかげでチープさすらも内容にマッチして思える不思議さ。ブラッシュアップライフで最近タイムループものが流行ったばかりなのにそれに引っ張られることもなく、唯一無二の面白さだった。

 

 設定がとても単純で、「何かしらが原因で貴船の一部の地域の人たちが2分間のタイムループに嵌っている」というストーリー。旅館の従業員や客がタイムループに気づき初めは混乱しパニックに陥るも、次第に「初期位置」「次のターンで」と漫画的な状況に慣れ始めるのが笑える。タイムループの途中で自動車事故にあっていた人も最後にはカーブの抜け方心得てるしwそしてタイムループの原因は自分だと言い出す主人公のミコト。厨房で働くタクがフランスに行きたがっているのを認められず、川に「流れないで欲しい、時間が止まってほしい」と祈っていたタイミングでちょうどタイムループが起きたという。ほかの従業員がミコトを捕まえようとするが、ミコトはタクと逃亡劇を繰り広げる。それをきっかけに起こり出す死亡事故や喧嘩を見てようやくミコトは再び川に時間を戻すよう祈るが、タイムループは終わらない。結局原因を調べていたエイジが神社に留まっていた寒さで凍結しているタイムマシンを見つけ、みんなで協力してそのタイムマシンを未来に返して一件落着するのだった。

 まず脚本で見事だったのが伏線回収で、「娘に彼氏が」「締め切りが」「雪を心配していた」などみんなそれぞれ時間が止まってほしいと思う心配事がありミコトを筆頭に原因は自分なんじゃないかと言い始めるが、しかし結局全部全く関係なくて、サミットの不審物を見に来たタイムパトロールの船が原因だったのがウケた。ミコトとか最後のほうは「時間を操れるの?」「いや、そんな大層なことじゃないんですけどねアハハ」みたいにちょっと楽しんでいたというか得意げな雰囲気だったのにww逃亡劇とかも何の意味もなくて、最終的にはすべて茶番に終わっているところがなんとも良くできていたというか…

 まるで取材か何かで旅館を訪ねたyoutuberのような素人感のあるカメラワークと芝居じみた演技、月に行ける技術があるのにオンボロなプレハブのようなタイムマシンみたいなB級感も相まって「茶番劇」感が強くて(←一切悪い意味ではない)、それがコメディとして秀逸だったなと思います。

 登場人物もみんなクセがあって面白かった。裸で暴れまわる編集長(まああの状況では仕方ないと思う)、なんでも試してみたくなる小説家、喧嘩するほど仲のいいノミヤとクスミ。あと番頭の演技が良かった。

 

 最後のシーン、結局あのタイムパトロールの子はミコトの娘とかだったのかな?良くわからないけど。あとは撮影地がすごく良かったです。複雑な構造の老舗旅館と向かい側にある趣深い神社。きれいな川と自然。あと個人的にタイトルすごく好き。長さも1時間半とちょうどいい。音楽は…うーん、まあ予算的にいろいろ厳しかったのかな。でもエンディングの曲はよかったです。配信されたらもう一回みたいなあ。