2023.08.11
グレタ・カーヴィグ監督/アメリカ/2023年
めちゃくちゃ面白かった!!可愛くてシュールでカオスな世界観とメタ的視点。アメリカ人によるアメリカ人のための映画だなとは思ったけど、普遍的なメッセージは誰にでも通用するもの!皮肉感満載のジョークや洋画ネタ、バービーの本社ネタなど、向こうの文化にそれなりに親しんでいないと理解が難しい人もいるんじゃないかなとも思った。(そもそも日本人はバービーで遊ばないしね。)けど自分はめちゃくちゃ楽しめました。とにかくシュールさとアイロニーを前面に押し出していたのがめちゃくちゃウケた!!何よりマーゴット・ロビー可愛いし。可愛いし。可愛いし。(エコー)
バービーランドの世界観がまず楽しくて、「ハーイ、バービー」「ハーイ、バービー」「ハーイ、ケン」「ハーイ、ケン」「ノーベル物理学賞の受賞者はバービー!」「ノーベル文学賞の受賞者はバービー!」みたいやり取りが超シュールでウケた。そして夢の世界ではあるんだけど廃版になったバービーや酷く扱われたweirdバービーがいたりと、メタ的というかあくまで現実世界で作られた人形だというギャップがまたシュール。発想が豊かすぎる。
世界中から輸入したというピンクの塗料を使いまくったバービーランドはまさに女の子のための世界。医者も大工も科学者も政治家も全員女性、そして毎日ガールズナイトパーティーが開かれる。一方でケンは家すらなくビーチに立っているだけで、ビーチバレーをするバービーたちを応援するシムリウたちが可愛かったけど、バービーというシリーズ製品の主人公はあくまでバービー。ケンはバービーがセットでないと成り立たない存在。そしてこの世界観が現実世界と真逆なことを上手く利用してメッセージ性を見出している映画。
それにしても、登場するバービーがほんとにみんなバービー人形みたいに可愛くて良かった。あんなに色んな種類のバービーがいるとは知らなかったなあ。あとマテル社を盛大に巻き込んでて面白かった。CEO、あくまで売り上げが重要なんだけど、バービー人形を愛していて、世界中の少女に夢を与えたいという気持ちが本物だったのでめちゃくちゃ推せた。ローラーブレード履いてあたふたしてる姿がウケたし。
あとマーゴットバービーの持ち主が結局娘じゃなくて母親なのも良かった。どの世代もバービーに親しんできたんだなって思えて。
ポリコレ色満載でそれが気に食わなかったっていうレビューもいくつか見たけど、いや、むしろそれ自体をネタにしてたじゃん(笑)この映画のメッセージとしては差別だとか白人至上主義だとかそんなの以前に「他人によってレッテルを貼られて振舞い方を強いられることによる生き辛さは計り知れないもの。だからこそ自分が何者で何をしたいのかを、自分自身でしっかり見つめてみて。」っていう、社会にというよりは個人個人に宛てたものだったと自分は解釈した。女だから、男だから、若いから、年寄だから、白人だから、アジア人だからと、人は他人を何かと固定観念を持って見てしまうしその枠に嵌った振る舞いを期待する。そして相手の苦労は相手の立場に立ってみないと決して分からないけど、実際にそうすることは難しい。立場が違う以上いくら想像力を働かせても相手の苦労をすべて知ることは出来ないよね。映画館に置いてあったフライヤーのキャッチフレーズに「完璧よりも大切なもの」ってあったのが印象的だったけど、完璧って大体は他人からの評価だし、重要なのは自分で自分の存在意義を見出し、他人のありのままを受け入れること。だから定番型バービーは最後皆から求められる完璧な女の子像を捨てて現実世界で自分探しの旅に出た。バービーたちのように自分たちの住む世界と正反対の現実世界を見て気付きを得られるならいいけど、実際にはそうもいかないからこういう映画を見て多くの人が自分を認められるといいなと思いました。
で、こういったメッセージ性満載の映画だったにもかかわらず、あくまでハッピーなおもちゃの主人公たちのコミカルな世界観を貫いていたのがエンターテイメントとして秀逸だった。「マーゴット・ロビーが言うと説得力なし」←共感の嵐。重い話題をジョークでまとめちゃうのが上手いよね。映画だからさ、見終わった後に「面白かった」「凄かった」っていう気持ちでいたいもん。乗馬風に歩いてくるケンたちとか、時間聞かれただけで舞い上がって腕時計つけまくるケンとかさあ…がっつり笑わせに来るエンタメのセンス神かよ…唐突感ある展開もご都合主義も、ハチャメチャコメディ感があって楽しめたなー。あー面白かった。