ただの映画日記

備忘録として映画の感想文を書いているだけ。

「ウェンズデー」感想

2023.01.08-2023.01.18

ティム・バートン監督/アメリカ/2022年

 

 めちゃくちゃ良かったです。流石ティムバートン先生としか言いようがない。脚本もセットも音楽も映画規模。魔法のような特殊能力を持つ生徒たちと中世をモチーフにした学園が、ハリーポッター感満載で好みだった人が多いんじゃないかと。自分はアダムズファミリーの原作についてはミリしらなのでオマージュなどは一切分からず、全く新しいドラマとして鑑賞。初めの方は幻視という特殊能力に目覚めた主人公のウェンズデーが超能力を持つ子供たちが集まるネヴァモア学園に転校し学生生活を送っていく学園モノのファンタジーかと思ったけど、ウェンズデーが学園を壊す存在だと予言されていた存在云々の辺りからミステリー色が濃くなっていった。

 初めはネヴァモア学園周囲で起きていた奇妙な連続殺人事件とウェンズデーに関する予言に明確な関係は見えないが、段々とそれらに繋がりがあることが明らかになってくる。ウェンズデーは魔女の家系の子孫。怪物はハイドという変身系超能力者のタイラーだが、彼は超能力者の自覚がない。その間に挟まるのは、かつて魔女狩りの筆頭だった人間の子孫で今は学園で教師をしているマリリン。マリリンはハイドであるタイラーを利用し先祖を蘇らせるために次々と怪物化したタイラーに殺人を犯させる。ウェンズデーは怪物の正体と主人を探そうと奔走するが、その過程で何人もの人を疑うことになる。同級生のゼイヴィアは逮捕され、カウンセラーを担当していた精神科医はウェンズデーが話し過ぎたことで殺された。ラスト2話で容疑者探しがぎゅぎゅっと詰まっている感じで、かなり目まぐるしい急展開を見せる。最後は人間の血肉を使って呪いで先祖を蘇らせるという完全なヴォルデモート復活パターン。

 

 ミステリー調のストーリーは面白いんだけど、やっぱりこの作品はファンタジーとして秀逸だ。徹底されたウェンズデーの冷血なキャラクターは周りの人間関係を難しくしていてヒューマンドラマとしても面白い。イーニッドの「友達は頼まれなくてもそうする」は名台詞だと思う。やっぱり主人公の親友ポジが良いキャラクターだとドラマとし面白くなるよね。ハリポタ然り、LOTR然り。そういうポジションのキャラクターを通して私たちは物語の世界に共感できるから。

 で、何より細部まで作り込まれた建物や衣装やメイクアップが素晴らしかった。ウェンズデーのマミーの美しさと来たら!!魔女だったよ、あれはホンモノの魔女。キャサリン・ゼダ・ジョーンズ…良きかな…ネヴァモア学園の内装外装も全体的にホグワーツを彷彿とさせたデザインで、でも皆スマホやパソコンを普通に持ち込み校長室のデスクにもMacBookというのがちぐはぐな感じで面白かった。寮室の窓、地下クラブの入口の銅像、門などののデザインも好みだった…学園に森と湖がある辺りも完全にホグワーツ。クィディッチならぬボートレースやプロム的なレイヴンというパーティーも学園モノ要素として楽しい。レイヴンでのウェンズデーのダンス、好きすぎて何度もリピート。あのダンスはジェナ・オルテガ本人が振り付けたそう。衣装ともぴったりな奇抜で凄く良かった。

 一歩学園を出たら普通に我々の住む現代社会というのがリアリティがある。ネヴァモア学園と街の関係が不透明なままで、そこがシーズン2でもっと色々描かれるのかな。

 超能力に関しても、結構色々な力を持つ学生がいるようで面白かった。絵画に命を吹き込むゼイヴィア、蜂を操るユージーン。そして何より存在感があったのがウェンズデーのワトソンであるハンド。痛々しい見た目なのに愛嬌のあるコミカルな動きで愛着が湧いた。イーニッドと仲良くネイルのケアをしてるのも可愛いい。

 あと音楽も凄く良かった。特にウェンズデーチェロの演奏がそのままBGMに引き継がれるような演出がエモくて、その他のシーンの音楽も全体的にチェロを中心とした円窓と奇怪な雰囲気でまとめられているのが良かった。

 

 ファンタジーとミステリーに加えてホラー、恋愛、サスペンス的な色んな要素を組み込めるのはやっぱりドラマという長尺の為せる技かな。ストーリーについてもっと細々感想を残しておきたいけど書ききれん…シーズン2が配信されるまでにもう一回観よ。