ただの映画日記

備忘録として映画の感想文を書いているだけ。

「ザ・メニュー」感想

2023.01.15 初回鑑賞

マーク・マイロッド監督/アメリカ/2022年

 

 流行ってるので観ました。普段はホラー系は観ないんだけど、ちょうどアニャ・テイラー=ジョイの出てる映画を観たかったので。今回も魅力的な演技でした。

 ポスター以外の事前情報を調べなかったので、初めはタイトルだけ聞いて三ツ星フードトラック始めました的なノリの映画かなと思ったけどコックが自殺した辺りで、あ、ミステリーかって気づいてその後は少し身構えながら観てた。舞台設定としてはミステリーでありがちな孤島に立つレストランやホテル内で起こる殺人事件なので、小説とかで読めば特別目新しくもない内容だったんだけど、役者の演技と場面転換や諸々の演出と音楽が洗練されていて観ごたえのある作品だった。まあ描写がかなりグロいでの別にチーズバーガーは食べたくならなかったよ(笑)

 

 世界的に有名で妄信的なファンがいるほどのシェフは完璧主義がゆえにクレイジーな方面に走って行って、最終的に自分の芸術世界を壊した投資家や料理評論家や店のオーナーを殺すために孤島のレストランに招く。まさに怪物的で狂信的でクレイジーなんだけど、その役を演じたレイフ・ファインズが恐ろしいほどにベストマッチ。冷徹なのに燃えるような執着を宿している視線が狂気な感じを醸し出しているようないないような絶妙さ。客の中にシェフのファンは一人だけだったけど、最終的にシェフのオーラに負けて全員が「イエス、シェフ」で炎に包まれていく姿がクレイジーだった。それを海の上から見つめながらチーズバーガーをむさぼるアニャちゃんもまたクレイジー

 ストーリーに凄くインパクトがあったわけではないんだけど、シェフの料理の説明のセリフにはインパクトがあった。料理は命であり生態系であり世界だ。みたいな。すさまじい解釈だね。値段とステイタスだけの美食文化への風刺もがっつり。

 音楽の緊迫感か演出のおかげか、気づいたらシェフの世界にのめり込んでいる感じ。一品目、二品目とコースとともに章が進んでいく物語。それにつられて感情がどんどん大きくなっていく流れが綺麗だった。場面転換と文字の演出がオシャレ。ああいうの、いろんな映画で取り入れてほしい。