ただの映画日記

備忘録として映画の感想文を書いているだけ。

「生きる LIVING」感想

2023.04.23 初回鑑賞

オリバー・ハーマヌス監督/イギリス/2022年

 

 黒澤明の「生きる」をカズオ・イシグロの脚本をもとにリメイクした作品だそう。自分は黒澤作品を観たことがないので原作と比べてどうこうというようなことは言えないけど、いい映画だなと思った。ただ、どこが良かったかといわれると難しいというか…ストーリー?演出?演技?世界観?どれも飛びぬけているということはなかったけど総合的に見てバランスがいいという感じだろうか。分かりやすいようで掴みどころがなく、普遍的なテーマを描いている一方で小規模に進んでいく物語。ここ最近観た映画の中では一番渋い映画だったな。大人向けというか、50代60代にならないと共感するのは難しそう。少し冗長で説明的な感じもして、好みが分かれるかなと思った。ちなみに一緒に観た連れは絶賛してた。

 

 構成としては本当に分かりやすい流れだった。役所勤めのつまらない爺さんが余命半年の宣言を受けて、残りの人生を楽しもうとしてもそのやり方を知らず最終的には仕事に情熱を見出し死んでいった話。役所の部下や顧客、息子、知らない街で出会った劇作家とのやり取りの中で人生を見つめなおし、ゾンビのように生きていた日々を脱する。この手のストーリーってそれなりによくある気がするから、映画にするならやっぱり演出とかで魅せる必要がある。イギリスの綺麗な街並みと主演のビル・ナイの名演技をセリフなしのカットを多めに取り入れて存分に見せていたところが良かった。

 主人公の年齢設定がわからなかったど、働いている年齢なのでせいぜい60ぐらいなんだろう。ビルナイのおかげか70~80代に見えて、そんなに死ぬのが惜しい歳だろうか…と途中考えてしまった(笑)それにしてもビル・ナイはスーツにハットが似合いすぎてイケオジ感満載で最高だった。

 

 音楽は時代感を想起させるクラシックがメインだったが結構迫力があった。けど静かな場面が多かったな。オープニングがよかった。あとはイギリスの歴史的な部分での演出が多かったのかな。戦後復興、高級レストラン、英国紳士。そういった雰囲気が色濃く描かれている映画だなという印象でした。