ただの映画日記

備忘録として映画の感想文を書いているだけ。

「クイーンズ・ギャンビット」感想

2023.01.04-2023.01.08

スコット・フランク監督/アメリカ/2020年

 

 感想が書きたくなったのでドラマ枠追加です。クイーンズギャンビット、話題になっていたしずっと気になってたんだけどようやく手を出して4日で完走。めちゃくちゃ良かった!純粋なサクセスストーリーではないなと思ったので、最後の一局で勝つか負けるか予想がつかず最終話は終始ドキドキだった。

 

 母子家庭で育てられるも、交通事故で母を亡くし孤児になった主人公のエリザベス・ハーモンは孤児院で偶然出会った清掃員のシャイベル氏にチェスを教わる。もともと数学や地理が得意でチェスの才能を開花させたベスだが、孤児院で配られていたことがきっかけで精神安定剤の依存症になってしまう。数年後ベスは里親に引き取られ、義母と二人で賞金を稼ぐために世界中のチェスの大会に出場していた。そこでベスは様々なプレイヤーに出会い色々な経験をしていく…

 簡単に言えば才能あふれる幼いチェスプレイヤーの少女が世界チャンピオンを目指すサクセスストーリーなのだが、彼女は決して恵まれた環境に生きていなくて、薬と酒に頼りきりで、時々何のためにチェスをプレイしているのか分からなくなってしまう。そういう葛藤がストーリーや世界観に現実味を持たせていてとても共感できた。一方で最終話では今までベスが倒してきた対戦相手や孤児院での旧友も勢ぞろいで出てくるお約束展開もあったりして、もちろんサクセスストーリーとしても楽しめた。途中の義母の死があまりにあっけなくて悲しかったけど。

 冒頭に最終戦ではなく、その前の酔っぱらって対局に臨むベスのシーンを持ってきたあたり、ベスが世界大会を経て薬やお酒を克服し人として成長した自分の力で頂点をつかみ取る過程を強調したかったのかなと思う。天井にチェス盤を映し頭の中で駒を動かすことも薬のおかげでできていることだと思い込んでいたけれど、薬に頼らずともその力を備えていたことを最後の試合で気づけたのは、彼女の才能だけではなくこれまでの努力や経験や交友関係で得たものを自分自身で認められたからなのかなと思いとても感動した。

 

 ビジュアル的に地味になりがちなボードゲームのプレイをとてもかっこよくドラマチックに描いた点も本作の見どころだと思う。天井に移る巨大なチェス盤とさかさまに浮かび上がる駒。ベスとベニーが準決勝でそれぞれの相手と戦っているときの画面割り。プレイのシーンばかりにならないように重要な試合以外は結果と内容をベスが義母に語るシーンやナレーションっぽいのに置き換わっていたり。視聴者を飽きさせない演出がとてもよかった。あとは時代背景が1960年代前後なので衣装の華やかさや挿入されていた派手なロック音楽も作品を彩っていて好きだった。

 

 っていうか主演のアニャ・テイラー=ジョイ綺麗すぎでしょ。ビジュアルももちろんきれいなんだけど、演技がすごく印象に残るというか惹きつけられる役者で、今後ほかの作品にも出演していたら観てみようと思った。

 

 タイトルは最終戦で使う手法の名前かなと思ったけど、そこまで強調されていた感じはなかったな。でもシャイベルさんが最初のほうに教えてくれた手法だったので印象に残った。