ただの映画日記

備忘録として映画の感想文を書いているだけ。

「鋼の錬金術師 / 最後の錬成」感想

2022.06.25 TOHOシネマズ仙台 初回鑑賞

曽根文彦監督/日本/2022年

 

※個人的な感想です。

 

 まずは個人的な好き嫌いも踏まえた率直な感想をば…ショック。好みじゃないです。実写ならではの良さや2時間半という尺に収める工夫を、私には見つけることができなかった。良さが理解できなかったです。原作の半分の巻数を最後の一本に収めなきゃいけない。そのためにどのようにストーリーを上手く改変して綺麗な流れで終わらせるのか、とても気になっていました。前2作で各キャラクターの背景を語り切れなかった部分が多いことを踏まえて、ちゃんと観客を納得させる流れにできるのだろうか。それができたら漫画作品の映画化としてはひとまず上出来だな、と。完全に期待を裏切られた。ブリッグズの兵士たちの強さ、中尉が大佐に銃を向けるシーン、プライドがベイビーに還るシーン、アルを想って泣くメイチャン。どれをとっても背景がきちんと描かれていないし途中の描写もなくてアッサリ過ぎていく感じ。いいシーンばかりなのに一つも共感できなかったし感動できなかった。要はこういうのって取捨選択が大事なのに、全部を詰め込みすぎたせいで一つ一つが中途半端どころか触りだけ、みたいな状態になってしまっている。自分は漫画もアニメも履修済みだからその間の出来事や背景的なところを知識で補えたけど、原作を知らない人はどこを楽しめっていうの?(っていうかそもそもついていけるんだろうか…)

 また、演出に関しても映画の大きなスクリーンをまったくもって生かせていないと感じた。なぜアクションシーンでスピード感のあるカメラワークをしないのか。なぜ場面の切り替えが、ただ映像を繋ぎ変えるだけなのか。「映画」なんだから普段立って生活している目線では見えない角度から観たい。普通だったらありえない視線の動きを楽しみたい。一つのものにクローズアップして、それを再びルーズしたときに別の場面になるような簡単な工夫がなぜできないの?CGに関しても、ブリッグズの外観や最初の高原んのビジュアルなんかは良かったけど室内のCGがまるっきり映画を対象にして作られたものには感じられなかった。ゲームかな?ってか背景なんで真っ黒?みたいな。

 一文で表すと、アニメの名シーン集を実写で再現した、みたいな動画でした。脚本、演出どちらをとっても映画という感じじゃない。途中から尺の長さを感じて、正直退屈してしまった。個人的にね。個人的に。

 

 一方でかき集めれば良かったところもあります。まずはイズミ先生。彼女の役作りはまさに原作通りで、特に受話器に向かって放った「国軍大佐だかなんだか知らないよ!」のセリフの言い回しはあまりにイズミ先生本人でした。それから栗山千明さん演じるアームストロング少将。難しい役にも関わらずしっかり勉強されているな、と思わせる演技でした。声を張るところでの力強さやたっぱはやはり物足りなさを感じたけど、小綺麗な役を演じているイメージが強かった栗山さんにあんな側面があるとは思わず驚かされた。そして美しかったです。前髪がしっかりくるんとなってるところもよかった。

 前作に引き続き、シン組も非常に良かった。リン役の人の表情の作り方がとてもうまくて、リンとグリードの演じ分けもしっかりされていたのが凄かった。またランファンの「もう間に合わない」は今作のセリフの中で個人的には最も好きだったかな。

 他のキャストに関しても、やはり最終作だからなのか皆熱演で、痛々しさを感じることが無かったのは良かった点。

 音響、音楽もまあ良かったんじゃないでしょうか。

 

 しかしながらこれらの良さをすべてかき消してしまう脚本と演出…残念過ぎます。