ただの映画日記

備忘録として映画の感想文を書いているだけ。

「インセプション」感想

2021.12.25 2回目鑑賞

クリストファー・ノーラン監督/アメリカ/2010年

 

 先日メメントを初鑑賞し、ノーラン監督の映画を色々観たくなったので復習もかねて鑑賞。

 テネットが公開されて以来、個人的にノーラン作品の中で好きな映画ランキング一位にテネットが鎮座しているが、それまではインセプションが一番好きだった。彼の作品はどれも本当に時系列の構成が面白すぎるんだよな。インセプションは何段階にもなる夢の中で異なる速さで流れている時間が重なっているという超斬新発想。

 この作品に関しては、夢の階層と時間の流れ方、起き方についてさえ理解してしまえば、あとはそこまで苦労せずついていける作品だと思う。尺の中で夢を共有するというのがどのような仕組みなのかきちんとわかるように説明されているので、テネットのような不消化感はなかった。

 簡単に言えば一人の人の夢の中に他人が入り込める装置を使って、夢の中である人物にアイデアを植え付けようという(すなわちインセプション)のが大筋で、しかし他人の夢の中で動き回るのは容易なことではなく、さらにアイデアを植え付けるためには夢の中で見る夢、つまり深い階層まで潜りそこにいる当人に干渉しなければならない。階層が深くなるにつれ時間の流れは遅くなり、夢の中で死なない限り目覚めることはできないというのが、背景的な設定。主人公のコブは自分の妻にインセプションを試み、成功したものの妻は夢から目覚めた後も夢と現実の区別がつかなくなって現実で自殺してしまったという過去を持ち、そのリスクについて知っていた。しかし犯罪歴を取り消して家族に会わせてやるとい条件のもと依頼されたインセプションを遂行してしまう・・・

 夢の共有に関する設定と、夢の中の世界の映像描写がとても斬新で、特に上の階層では数秒間の出来事が下の階層に行くと数時間や数週間に伸びたり、上の階層で落下しているときはその下の階層でも無重力になるなど、階層同士の間に切れない物理的なつながりがあってそれに振り回されているのがとても面白かった。また、街中、ホテル、雪山と階層ごとにころころと風景が変わってスピード感があり見飽きなかった。

 最後サイトーを連れ戻すシーンが初めにつながっていたので、初めのシーンがこの時のためにあったのだとわかりとても腑に落ちたし感動した。序盤少し何の話かついていけなかったので。また、ラスト子供に再会するシーンでトーテムのコマが倒れそうで倒れないような描写で切れたので、え、どっちいいいい!!??ってなった。まあおそらく現実世界なんだろうが、そこをあやふやに描いたということは考え方次第ではまだ夢の中な可能性もあるわけで、だとするとどこからが夢だったのか、飛行機内で目覚めたのも夢の中の夢だったのか・・・ちなみにこの映画を観た日の夜、なんかすごく夢見が悪かった。

 メメント然り、本作然り、妻に対する愛が重いんじゃ。インセプションなんて規模としては戦争とか世界征服みたいな方向に行ってもいい話なのにコブもサイトーもあくまで利己的な理由で動いているのが面白い。

 

 渡辺謙は重役で、すごいハマリ役だったと思う。海外でここまで活躍している日本人の俳優は彼ぐらいだもんな。さすがと感じた。