ただの映画日記

備忘録として映画の感想文を書いているだけ。

「メメント」感想

2021.12.24 初回鑑賞

クリストファー・ノーラン監督/アメリカ/2001年

 

 ・・・難しすぎでは??噂には聞いていたが、ノーラン作品の中でも圧倒的な難解さを誇るのでは。時系列を返し縫のように逆からさかのぼって進んでいるというのは序盤で分かったが、一つ一つの出来事を順番を入れ替えて頭の中でつなぎ合わせようとするのは無理だった。いちいちメモを取りながら見たいぐらいだ。脈絡がなく突然ある出来事を目の前に突き出される感じは、数分しか記憶を保てない記憶障害の主人公の感覚をそのまま表現しているようで、実際自分があの手の記憶喪失になったらこういう感じなのかな、というのを疑似体験しているようだった。

 カラーと白黒の使い分けも面白く、カラーでは時間軸に沿って、白黒は逆再生に進んでおり、それらが交互にくるので余計にどの時系列の話なのかが分かりにくい。何度も観なおしてストーリーを覚えて、ようやく全てつながるような話だ。

 

 複雑な時系列の描き方とは別に、ストーリーもよくできていて面白かった。最初のカットから、テディが真犯人なのかな、とずっと予想していたらそうではなく、そもそも復讐劇は本編の時系列のずっと前に終わっていて、すでに復讐したということを忘れてしまったレナードのためにテディが架空の犯人「ジョン・G」をでっち上げ、ジョン・Gという名前の人物を殺させていたという真相。

 それを知ったレナードは怒り、偶然(かは分からないが)本名がジョン・Gであるテディを次のターゲットに決め、話の時系列の最後(映画では最初のシーン)で彼を殺す。記憶を保てないレナードにとっては「妻を殺した人物の復讐をする」というのが生きがいであり、その人物が誰であろうが関係ないのだ。テディを殺した後もまたそのことを忘れ、次のジョン・Gを見つけてターゲットにするのだろう。それも悪気があってやっているわけではなく、本人は本当に妻を殺した真犯人だと思っているのだから質が悪いというか不気味というか・・・

 レナードによって語られたサミーという自分と同じ症状を持つ患者も、結局はレナードが自分を投影させていただけのまったく無関係な人物。殺されたと思っていたが実は助かっていた糖尿病の妻を、自分が記憶を失くしたことによりインスリンを注射しすぎて自殺に追い込んでしまったという事実を受け入れられず、他人に投影してしまった。

 なんというか、後味の悪い話ではあるがミステリーとしてもサスペンスとしても面白くてまた見たくなってしまう映画だ。