2022.07.15 初回鑑賞
荒木哲郎監督/日本/2022年
一言でいえば勿体なさありまくりの残念映画。世界観や映像美は素晴らしいのに、それをまったく生かしきれてない設定と脚本…
まず設定過多。東京タワーで爆発が起きて世界中で泡が降り始める現象が起き、最後には東京だけが巨大な泡で包まれていてその内部は重力異常&水没状態。このバックグラウンドだけでもかなり込み入った設定なのに、その東京の泡の内部では不法居住者たちによってパルクールの大会が行われていて、パルクールの最中に水中に落下した主人公の響はどこからかやってきたウタという少女に助けられる。響は音に敏感な症状を持っていて、そんな彼とウタだけが東京タワーから発せられる謎の歌を聞き取ることができる。ウタは泡から生まれた人魚的な存在で、人が触れるたびに触れたところから体が泡になってなくなっていってしまう…どう考えても設定カオスでしょ。何でもかんでも詰め込めば面白くなるってわけじゃない。おまけに1時間40分と尺の短い映画で、それらの設定に関する伏線をほとんど回収できずに終わる意味不明ストーリー。結局何を主軸にしたかったのかさっぱりなんだよ。東京タワーから聞こえる歌についてなのか、ウタの正体についてなのか、響が音に対する症状を乗り越える話なのか、響とウタの恋愛の話なのか、はたまたパルクールチーム内での響を取り巻く絆的な話なのか。散らかりすぎてて何が何だか…で結局二人だけが聞こえる歌が何だったのか、ウタはどこから来たのか、ウタの家族はどこにいるのかとか、気になるところはわからずじまい。もはやこの映画で何を伝えたかったのかさっぱりわかりません。
そんな感じでストーリーは意味不明とはいえ、世界観は先述した通りとてもきれいだった。重力異常の中でふわふわ漂う泡や瓦礫と、その中で激しく行われるパルクールが対照的で面白く、またパルクール大会のシーンのカメラワークはかなりのスピード感で見ごたえがあった。
音楽に関しては、音を主題にした映画なら最初からもっと音楽を前面に出していくべき。途中から歌のモチーフがしつこいぐらい使われるようになったけど、最初のほうはまるで音楽には意識がいかないような演出だったので残念。