2023.08.01 初回鑑賞
佐藤信介監督 /日本/2023年
キングダム実写の、原作やアニメをミリしらの観客でも気軽に受け入れてくれる入りやすさが好きだった。ストーリーは1作ごとに纏まりがあるから前作の内容をしっかり覚えていなくても問題ない内容になっているのが素晴らしいと思った。原作ファンがどう思ってるのかは知らないけど。少なくとも映画として、原作抜きでも分かりやすく面白いというのは重要なことだ。1作目を公開した時にはまさか2作目、3作目と続くものとは思ってもいなかったけど、1作目の評判のよさで勢いがついたんだろう。2作目からの期間はかなり短く、ストーリーや登場人物もなんとなく引き継がれていて、さらに今作は2部構成なのか、完結していない。次回作はもう3作目を観ていないとわからない内容だろうな。最近1本で完結しきれない映画が多い。Dune然り、M:I然り。まあキングダムは漫画の実写化だしこの調子でいくと漫画に沿って続きそうだから、今後は前作を観ていないと(もしくは原作を知らないと)着いていけないということが増えてきそうな予感がするので1作目のような纏まりの良さを期待することはもうできないけど。
前作でも思ったんだけど、このシリーズは音響が本当に素晴らしい。オープニング(?)の声が少し大げさい低音を効かせすぎていて聞き取りづらかったけど、それ以外の部分は音楽・効果音・セリフの整音全てクオリティが高くて、特に騎馬隊の隊列による地響きやエイセイの部屋で話すお偉方たちの声の重厚な響きが雰囲気を作り出していてとても良かった。
あと邦画にしては珍しく音楽がどのシーンでもがっつり入っているのが好みだ。そして挿入歌などもなく本格的なクラシックで冒頭からエンドロール前まで同じ雰囲気で纏め上げられているのも素晴らしい。エンドロールの主題歌(?)は何だったのだろう。宇多田ヒカルだし曲自体は良かったと思うんだけど、あの曲が映画の内容に合っているとはとても思えなかったんだけど…「君たちはどう生きるか」の米津然り、最近の映画は有名なアーティストを使えば何でもいいとでも思ってるのか?エンドロールは観客が素晴らしい仕事をしてくれた制作陣思いを馳せながら作品の余韻に浸る大事な時間なのに、全く関係ない音楽を持ってこられたらそこで映画の世界から現実に無理やり引き戻されて余韻も何もなくなっちゃうじゃん。合わないポップスを流すなら劇中で使っていたクラシック音楽を流したほうが余程良いということがなぜ分からないんだろうか。余りにも商業的になりすぎていて困る。
ストーリーとしては、今回も一つの戦いについて描いていて、秦側の将軍を務めるのは満を持して王騎。個人的にはキングダム(実写)一のお気に入りキャラなので沢山出番があって嬉しかった。一貫して戦いにおいて将軍や軍師がどのような策で相手を制すかみたいなところがこのシリーズの面白さの一つになっているようで、今回はそれが特に顕著というか、ただ戦っているだけのアクションものではない頭脳戦も交えた戦争というのが見ごたえのあるポイントだった。シンは前回の戦いで戦功を挙げ100人隊の長となり、王騎からヒシン隊という隊名ももらう。王騎はヒシン隊を、敵の軍師の一人の首を取るという特別任務に就かせた。たった100人で騎馬隊に囲まれる軍師をどう討つか、100人を纏め上げ動かすシン。対してその100人隊も含めて8万の軍を動かす王騎。なんか戦争も現代社会も同じだな(笑)
テンは1作目以降あまり出番がないがエイセイは出番を取り戻し、「エイセイの過去パート長っ」って感じで戦いが始まるまでの導入にかなりの尺を使った印象だ。しかもエイセイの最初の約束設定、実写だけでみるとすごい後付け感…まあ原作ではもっと前から描かれていたことなのかもしれないけど。それはそうと、チカさんの最期のシーンは泣いた。
脚本に加えキャスティングが素晴らしいのもキングダムの見どころで、個人的には王騎とその副官(?)の組み合わせが秀逸すぎて好き。「満の満ですか。」「満の満でございます。」「満の満々ですか。」「満の満々でございます。」みたいなシーンが超良かった。山崎賢人の表情づくりがすごくいい。あと吉沢亮の目力凄い(笑)
視覚効果と衣装や小道具にも力が入っていて、10万の隊列は本当に見事だったし(あれはCGなのか?)、柱越しに会話を映すカメラワークや柱を通り過ぎたら場面転換しているなどの演出もカッコよかった。戦闘シーン、前作と同じ場所だろうけどどこで撮影してるんだろうな…景色がすごく壮大で良い。あとオープニングの地図と石造っぽい加工の演出、めちゃくちゃかっこいいし好き。
こっからは映画とは全く関係ないんだけど、銃を発明する前の時代の人間って、ちょっと頭のいいサルって感じだな。野性的というか、何でも戦いでしか解決できないと思っているというか…(笑)途中サルが長い棒を持って殴り合ってるようにしか見えなくなって、何回か瞬きした。