ただの映画日記

備忘録として映画の感想文を書いているだけ。

「インターステラー」感想

2021.01.03 初回鑑賞

クリストファー・ノーラン監督/アメリカ/2014年

 

 ノーラン作品を一つ観たら他も観たくなって、この正月はかなり観返した気がするが、そんな中でもインターステラーは実は初鑑賞。アン・ハサウェイの髪が短くて一瞬誰だか分からなかった。

 

 他作品然り、ノーラン作品である限りもう一度観ればより理解が深まるんだろうが、初見の感想として、前半は特に突飛な話でもなかったと感じた。地球が居住可能な星でなくなり、他の銀河系に移住しようというときに、人工重力を開発して現存する全員で移り住むか、今地球にいる全員は諦めて数人で人工授精による人口増加を試みるかの2択。前者のプランAを選びたいが人工重力を開発するにはあと一つというところで行き詰っている。極秘裏に宇宙へ科学者を送り出し移住可能な惑星発見の合図を受けたNASAはそれらの科学者を救出しデータを受け取るため、さらなる飛行士たちを派遣した・・・

 という過程を割と尺を使って説明していたので、ノーラン的な複雑さや時間マジックはいつ来るのかとソワソワしてしまった。はじめのほうに主人公クーパーの娘マーフィーが本棚から不自然に落ちた本を見て幽霊の仕業だというのが後々の伏線になっているのは分かったが、それがなかなか来なかったのだ。

 

 ブラックホール内に人工重力開発の手がかりがあると分かったあたりから急な展開になり、クーパーがブラックホールに入って5次元の世界を体験する場面がとても面白かった。考えると頭が痛くなりそうな話ではあるが(というより人間は4次元までしかとらえられないので無理)、もし5次元の世界があるとしたら、左右上下に人間が歩いたり飛び跳ねたりするように過去現在未来をつなぐ時間の橋のようなものを普通に歩いて渡ることができ、そもそも時間は流れているものではなくx軸のように置かれてあるだけのものなので、全ての時間に存在する無数の微分的な自分を積分的につなぎ合わせた様子が見えるのだろうが、そうすると時間軸を歩いている自分と各時間にいる自分が同時に二人存在することになり・・・????????

 ということで、5次元なんて実際に話をするとただの妄想になってしまうので映画の中だけで留めよう。ただ、映画的にはそれだけ複雑な話だったわけで、テネットと同じく、ブラックホールの中で時間の橋を歩いて過去のマーフィーにメッセージを送ったのはクーパー自身であり、クーパーがメッセージを送らなければ彼は宇宙に行くことはなく、彼が宇宙に行かなければメッセージを送ることもないというタイムループに嵌るのである。エージェント・オブ・シールドでもよくタイムループに嵌っていたりするのでやや見慣れた展開ではあるが。

 ノーラン作品の面白いところはストーリーの複雑さはさることながら、その映像描写にあると思う。ブラックホール中には5次元を渡り歩ける装置があり、いくつもの時間のマーフィーの部屋が無秩序に置かれていて、本棚を裏側から観た光景は一見ロールフィルムを素早く流しているように見え、時間が目に見える形になっているように錯覚した。結局5次元の装置を開発したのが将来のNASAだとしたら、その答えをブラックホールから持ち帰るのもおそらくクーパーで、そこでもまた時間がループしているのか・・・というか5次元を認識できる生物がいるとしたら、その生物から見た我々は紙に線で描かれたペラペラな生き物に見えるんだろうな。