ただの映画日記

備忘録として映画の感想文を書いているだけ。

「ようこそ映画音響の世界へ」感想

2022.08.27 初回鑑賞

ミッジ・コスティン監督/アメリカ/2019年

 

 映画音楽の作曲家よりもさらにスポットが当たらない音響デザイナーやミキシング技術者について語った貴重な作品でした。

 1960年代のテープレコードの時代から現代のDAWに至るまで、技術の進歩に合わせて音響が表現する幅がどんどん広がっていくのを順を追って説明したドキュメンタリー映画で、何なら初めは無声映画に生演奏で音を付けていた時からこんなにも音が映画に与える影響が大きくなるまでに通ってきた様々な映画作品を一緒に追いかけられて、なんか感無量。技術ってすごいな。ありがとうデジタル録音。ありがとう5.1ch。

 

 マイクの感度が悪かった時代、テープ録音に入った雑音を手作業で他の環境音に置き換えていた時代は一体どれだけ一つのトラックを作るのに時間がかかったことだろう。その時代の映画音響がほとんど評価されていないのがあまりにも悲しすぎます。そこからスターウォーズが出たときの衝撃よ。その頃の時代ってデジタル音が出たてで、普通だったらこれでもかというほどデジタル音源を使いたくなるよね。ウーキーの鳴き声だけじゃなくてあの独特なタイファイター、スレーブ1、ライトセーバーの音が全部録音を編集したものだなんて…発想が段違いなのよね。この音を録音してこう編集したらこんな新しくてかっこいいエンジン音ができるんじゃないか、なんて普通に生活してたら思いつかないもんですよ。普段から身の回りのいろんな音に注目しながら生きてるんだろうなあ。今より編集ソフトに頼れない分、録音段階でなるべくマッチする、多様な音源を集めてくる必要があるよね。今だったら作りたい音はたいてPCの中で作れてしまうんだろうけど。そして映像に今のようなリアルなCGとかVFXがない分、音響がリアルなだけでも画面内の世界に臨場感が出る。そういう意味では今よりよっぽど音の影響って大きかったかもしれない。

 

 ルーカス先生にスピルバーグ先生にノーラン先生と、いい映画には必ずいい音響デザイナーがいてミキサーさんがいて、音にものすごく拘ってるんってことがよくわかりました。だって紹介されてた映画、有名な作品ばっかりだったもん。今でもジュラシックワールドとかってやっぱり音がずば抜けて迫力あると思う。4Dでもないのに音を超えた振動を映画館で感じられたとき、まるで自分がその映画の世界に入り込んだ感じになる。真にそういう作品って、今でもなかなか少ないんじゃないかなと思う。

 音楽に関して言えば、ブラックパンサーは映画観たとき一番に「音楽やべぇ…」って思ったけど、やっぱり音響界隈(?)の間でも評価されてるんだなあと感じた。