2024.10.06 初回鑑賞
アレックス・ガーランド監督/イギリス・アメリカ/2024年
普通に気になっていた作品なんだけど、前日チケット取るときに偶然前評判を目にして、かなり覚悟して観に行ったのです。ホラー系でないことは分かっていたけど、ホラーより怖いとか途中で席立とうか迷ったとか書いている人もいたので、苦手な部類だったら嫌だなと。で散々迷って結局観たんだけど、自分が思っている方向性で後味の悪い映画というわけではなかったです。
内戦が起きているアメリカの戦場カメラマンのロードムービー、とシンプルに表せる映画。”内戦について”の詳しい話は何もなく、反乱を起こした国民によって結成された軍がワシントンDCのホワイトハウスに向かって攻撃する場面だけがリアルに映し出される。しかし主役となるのは兵士ではなくジャーナリスト。内戦の悲惨さと、それを外の人間に伝えるのになくてはならない存在であるジャーナリストについての映画だ。実際に戦場に赴いたことがあるわけはないからこの映画で描かれる戦争がどれほど現実に近かったのかは想像の域を出ないけど、とりあえず身も蓋もないことだけは分かる。最前線に居る兵士以外は相手が誰かも分からずに殺す人々。もはやそこには正義も意義も目的もなく、全部見失ってただ銃弾を飛ばし合う行為だけが残る。無意味すぎて無意味オブ無意味。撃ってくるから撃つのだというのは、何のための戦いだろうか。つまりこの映画は、どんな事情であれ戦争ってのは無意味なんですよってのを良く表していた気がする。気に食わない元クラスメイトを蹂躙するガソリンスタンドのスタッフ、内戦に乗じてどさくさに紛れ異邦人を殺す赤いサングラスの兵士。私情交じりで残酷に見えるけどやってる行為は内戦も同じだ。
戦争について考えさせられる映画ではあったけど、この映画のメインはあくまでジャーナリストについて。2人の女性カメラマンが出てきて、片方は出版社に所属するベテランのリー、片方はプロを目指す若いカメラマンのジェシー。その他にも長年業界に身を置くサミーとジョエルの4人のジャーナリスト集団で前線を追いかける。戦場というのがいかにクレイジーな現場で、そこに身を投じ続けるには…報道の力を信じ使命感で戦争を撮影してきたリーはヒヨッコのジェシーから見ると恐れを知らないプロに見えたけど、リーは目の前で消えていく命に無感情になることはできなかった。一方でジェシーやジョエルはもっと狂気的で、結局戦争という場面ではそういう人たちが生き残るんだろうなと思わせる最後。怖いねー。人が倫理観も何もかも捨てられちゃう世界だよ。
音が凄いと事前に聴いていたけど、フォーリーが本当に良く出来ていたと思う。音楽の選曲が普通の戦争映画とは違い、どちらかというとロードムービーのテンション感。そういうチグハグで奇怪な感じがA24節が効いているなと思った部分。
上空からDCを映す場面とか、全編通して何となくテレビの報道を見ているような画角で報道陣の視点映した報道を見ているような感覚だった。画的に美しく魅せている部分もあって、芸術作品としても成り立っているのが面白いなと思った。