2024.05.25 初回鑑賞
ジョナサン・グレイザー監督/イギリス/2023年
アウシュビッツ収容所のすぐ隣で暮らす、収容所勤務のルドルフとその家族の幸せな日常を淡々と描いた映画。収容所側の風景は一切映さず、収容所でどんな残酷な行為が行われているかは観ている側の想像に任せられる。
正直に言えば歴史に詳しくないこともあって、鑑賞中は各場面の意味・重みが分からず少し退屈してしまった。多分もっと収容所側の映像もあって、緩急の激しい映画を期待していた。でも後から思えば、そういう残酷な映像を期待していたってのが、すごく恐ろしいことに感じたというか…史実を基にした話なのに自分に関係ないだけでこうも冷酷になれることを思い知らされたといった感じかな。それを意図したストーリー構成と演出だったし、私だけでなく他の観客も同じことを思っただろうけど。つまりは「関心領域」ってこと…
一家で川辺のピクニックを楽しむ場面から始まり、ボート、ママ友、プール付きの庭。二人の愛すべき子供にユダヤ人の使用人。ユダヤ人の行動を追うシーンでは赤外線カメラみたいな画で別の話のような演出。
残虐な事実は一切画面の外なのに、聞こえてくる音や会話や微かな悲鳴や煙にとんでもない違和感を感じる。違和感を感じながら平和な日常を眺める謎の感覚。
でもそれって本当は現実にもいくらでもあることで、少し離れた国では戦争をやっているのにその隣で平和に暮らしている国がある。それをテレビやらネットやらで見ているのに、私たちは慣れてしまっているから違和感に気づけない。本当に時々、意識を向けてみるけど、だからと言って何をするわけでもない。そんな傍観者側の現実を少しわかりやすく描いた映画。アカデミー賞二冠だそう。音だけで収容所側の出来事を観客に想像させたわけだから、音響賞はうなずけます。当時のことを直接体験した人はいないのに、どうやってリアルな音を作ったんだろう。A24は最近本当に勢いがあるね。大げさな音楽とか演出が本編ではほとんどなくて、エンドロールだけ不気味な音楽流すの。A24節が効いてるなと思いました。