ただの映画日記

備忘録として映画の感想文を書いているだけ。

「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」感想

2022.11.26 初回鑑賞

スティーヴン・ダルドリー監督/アメリカ/2012年

 

 名作だった。タイトルが気になってネトフリで鑑賞したんだけど、ストーリーがものすごく良かった。小説が原作らしいから小説も読んでみたいと思えた。映画にしたことで良く言えばテンポよく、悪く言えば隙間だらけに進んでいっているような場面もあったけど、物語全体としてとても面白いかったし感動した。

 主人公の男の子オスカーは小学生ぐらいで(何歳の設定なんだろう)アスペルガー障害をもち、宝石店の父とオフィスで働く母の息子だった。彼は父ととても仲が良くて、研究者ごっこをして遊んでいたが、そんな大切な父を9.11のテロで亡くしてしまう。今まで以上に沢山の物がきっかけでパニックを起こしやすくなったオスカーだが、ある日父の遺品の中から正体不明の鍵をみつけ、その鍵穴を見つける旅に出る。ヒントは鍵の入っていた封筒に書かれた”Black”という文字だけ。父の「探し続ける」という言葉を胸に片っ端からニューヨーク市に住むBlack氏を訪ね始める…

 

 オスカーを演じたトーマス・ホーン、子役ながらに凄い名演技だったのが印象的だった。子役がメインの邦画とかをあまり見たことが無いから比べようもないけど、stand by meとかETとかローガンとか本作とか、子役がガッツリ主人公をやってる洋画の役者の子ってものすごい演技力。違う国の人だからそう思うのかもしれないけど、今回のオスカーの役は父をテロで亡くした上にパニック障害があって常にタンバリンを持ち歩かないと外出できないような難しい設定の役なのに、まるで本人が経験したことがあるかのようなナチュラルさだった。人と話すのは苦手だけど言葉が出ないわけではなく、ある時は黙りこくっているかと思えば堰が切れたように話し出すときもあり、そして何より頭が良くて繊細だから父の死に対してすごく現実的な考え方をしているオスカー。でも精神的にはまだまだ子供で父の死を受け入れられず母に当たり散らしたり衝動的に鍵穴の行方を追ったりする不安定な子供が凄く良く再現されていて、なんか観ていてとても辛かった。周りの母親とか祖父母がもっとサポートしてあげて!って言いたくなったけど、大人だっていつでも冷静にふるまえるわけじゃないよね。

 名演技に加えて回想シーンの使い方とか脳内の記憶を再生するような演出がリアリティを後押ししていてとても良かった。

 

 テロが市民に与えた影響はものすごく大きくて、オスカーが出会ったBlack氏たちも皆大切な何かを失ったり探したりして生きてることがわかる。Black氏に当時の市民たちの様子を反映していたのかもしれない。そんな人たちに沢山出会ってオスカーは社会というものを知って成長していくし、トラウマも克服しようと頑張る姿がとても生々しかった。あとはオスカーの両親の愛がとても沁みました。夫を亡くし息子を守りたいけど成長もしてほしくて最後まで陰からオスカーの旅を見守り続けた母に感動感激。全私が泣いた。ってかトム・ハンクスサンドラ・ブロックの夫婦って豪華すぎでしょ(笑)

 

 音楽は「最強のふたり」っぽさを感じた。疾走感と不安感があるけどどこか心にしみる音楽が終始あってそれがミステリーっぽさを醸し出してた。全体としてはヒューマンドラマがメインかな。原作本はもっとミステリーっぽいのかもしれないけど。

 あとはオチも好みだった。観ている側としてはずっと鍵が一体何をロックしているんだろうと物語を追って、最後にその正体がわかるのを楽しみに観てきたわけで、しかしながら鍵はオスカーや父とは何の関係もなかったことがわかる。それなのにガッカリしない感が良いなと思った。鍵の中身より大切なものを旅の過程でオスカーが得られたからだと思います。