ただの映画日記

備忘録として映画の感想文を書いているだけ。

「ハドソン川の奇跡」感想

2022.10.24 初回鑑賞

クリント・イーストウッド監督/アメリカ/2016年

 

 邦題だけ見るとなんか古臭い映画に聞こえるんだけど製作は2016年。2009年に起きたUSエアウェイズ1549便不時着水事故の話に基づいた映画である。原題は不時着したパイロットのニックネームからとって「SURRY」。邦題に関しては当時のニューヨーク州知事が「ハドソン川の奇跡」と呼んだものに因んだと思われる。

 

 タイタニック(旧)のような事故そのものではなく、事故があったにもかかわらず咄嗟の判断で乗客全員の命を救った操縦士・副操縦士が事故の原因究明の調査に立ち会う場面を中心に描かれている。事故自体が離陸から5分の間に起きたバードストライクによるもので、期待が十分な高度にない上に両エンジンの停止という極めて異例な状況だったため初めはテロなどの疑いもあったそうだ。

 国土安全保障省のシミュレーションの結果着水という手段を取らずとも近くの空港に不時着できたという結論を突き付けられ、パイロットとしての判断が正しかったのかと疑われた操縦士のサリーと副操縦士のジェフだが、実際にはシミュレーションにバードストライクがあってからの判断時間が想定されておらずそれを考慮すると不時着水以外の選択肢がなかったという事実となった。

 これらの作中のごく詳細な調査があまりに綺麗にできていたのでそのあたりはてっきり作り話だと思っていたが、後から調べてみたらAPUの起動が早かったことや35秒の判断時間など実際の事故調査にまるっと忠実に描かれていたようで驚いた。前代未聞の事態に培ってきた経験や技術で冷静に対応する姿は本当に尊敬できるし、かっこいいと思う。サレンバーガー機長はその後様々な場面で表彰され、オバマ大統領の就任式にも呼ばれたそうだ。彼のような素晴らしい操縦士に若い操縦士が様々なことを学んでいるんだろう。

 話があまりにドラマチックだったのでヒューマンドラマを見ているような感覚だったけど、実際にはほぼドキュメンタリーと思っていい内容だ。もちろん多少脚色されている部分はあっただろうけど。操縦士や客室乗務員だけでなく乗客同士の助け合いや駆け付けた海上警察やヘリの対応が迅速だったことも功を制したのだろうと思うと、最後に機長が言っていた「事故に関わったすべての人のおかげで全員救命が達成された」という内容の言葉はとても胸に響いた。ジェフの「やるなら7月に」もユーモアを忘れないアメリカ人な感じで良かった。